帝京大学剣道部 監督
小澤哲也 先生
剣道七段。高校時代に神奈川県代表として国体優勝など戦歴多数。帝京大学時代は主将として活躍。実業団剣道部(富士ゼロックス)を経て、本学剣道部コーチとして招聘、2013年より監督。現在、本学職員。
剣道の始まりは、日本刀と同時期の平安時代と言われる。戦国時代などを経て平和な江戸時代に活人剣となり、生き方をはじめとする心法などを重視するようになっていった。そのため、強さだけでなく型や所作、礼法などが段位取得の評価の対象となる。
段位には初段から八段さらに範士、教士、錬士があり、試技のほか立ち振る舞いも審査対象となる。昇段審査は段と同じ年数分の精進が受審資格で、二段を取得したら2年が経過しないと三段の昇段審査資格を得られない。そのため日常における礼儀作法や意識、身体訓練、勉強などすべてに精力を注ぐ必要がある。
子どもから大人まで一堂に会する剣道の道場は、地域コミュニティとして機能。帝京大学剣道部の学生も、夏季休暇などで地元に帰る際は地域の道場に顔を出し、子どもに指導することもある。段位において技術だけでなく礼儀作法が評価されるのは、コミュニティの安定的な環境構築の意味もある。
帝京大学剣道部にはプロアスリートに近いメンバーが所属するが、剣道歴の浅い経験者も受け入れ、道場コミュニティとしての部活動の文化を失わない試みを行っている。また、留学生を対象にした体験教室や、ガーナへの剣道具の提供など国際的なプロジェクトも実施。
剣道は、護身を含めた武術的要素や技術的要素に加え、コミュニティ文化の醸成という社会的要素が備わっているため、地域社会の安定に貢献できる。地域コミュニティの健全性はすべての国において重要なテーマ。剣道の構造は地域にとって価値あるものという観点から普及の道を探求すれば、剣道関係者の増加と世界課題の解決につながる可能性がある。